6.モックアップ

モックアップというのは、訓練所の中にある飛行機の客室の模型のような所です。実機と同じ座席とギャレー (調理室) があります。窓の形はありますが、外が見えるわけではありません。もう片方には壁がなくて廊下から見学できるようになっています。
ここで訓練生は仕事をするスチュワーデス役、お客様役、そして見学をする3班に分かれてサービスのイロハを勉強するのです。

まず最初は、搭乗するお客様のご案内。
妊婦さんには枕を差し上げます。お腹とシートベルトの間に入れて衝撃を和らげるためです。お子さん連れのお客様がよく間違われるのは、子供を膝に抱いてその上からシートベルトをなさることです。ベルトは大人だけにして、子供さんはしっかりと抱いていただきます。

モックアップでのハイライトは、何と言ってもミールサービス
嬉しいのはお客様役で、機内で出される食事と同じ物を頂けるんですよ〜
当時の訓練生は海外旅行なんてしたことない人が殆どですから、もう天にも昇る気持ちです。「これこれ、食べるのに夢中になってはいけません。よく見てるんですよ。」 と注意を受けるのも仕方ないでしょう?
   訓練生 「ワインはいかがでしょうか?」
   お客様 「赤ワインには何がありますか?」
   訓練生 「えーと、・・・」
もたもたしていると、教官から叱責の声が飛んできます。

ある時、私のフライト・スケジュールに一日だけ ‘地上勤務’ のマークがありました。スケジューラー (スケジュールを組む人) に何をするのかと尋ねると、訓練所へ行ってモックアップでミールサービスのお手伝い、つまりギャレーでお肉を焼く仕事だというのです。

当日は訓練所のトイレで制服に着替え、エプロンをつけてモックアップへ出勤。
訓練生が手順の説明を受けている間に私はギャレーで下準備。実機とは物の置き場が多少異なっているので、さっと取り出せるよう確認もしなければなりません。
メンバーを入れ替えて2度やりました。2回目は既にオーブンが温まっているので、時間に注意をしないとステーキがウェルダンになってしまいます。でも説明を受けながらの食事ですから、私としてはバタバタせずソツなく仕事を終えることができました。

最後の反省会では 「アシスタント・パーサーの○さんからも一言いただきましょう。」 とか言われて、偉そうに一席ぶったのでありました。(^^ゞ