ジヴェルニーへ観光バスで行った際、案内をしてくれた日本人添乗員さんは若い頃に絵を勉強した人で、その説明の詳しいこと! 自分で描いたデッサンを見せながらの解説は、とても分かりやすく勉強になりました。観光をしてから随分経ちますが、できるだけ思い出してみようと思います。(My bus、中川氏)
その昔、フランスでは サロン (展覧会)に出品して入賞しないと画家達は生活ができませんでした。1863年のサロンに入選した絵の中に カバネル の 「ヴィーナスの誕生」 があります。この絵はナポレオン3世が購入しました。そしてこの年、落選した絵を集めた展覧会が開かれ、その中の マネ が描いた 「草上の昼食」 は大変な物議をかもしました。それまでは、「歴史上の英雄を美しく描く」 のが絵というものでしたし、女性の裸体は女神に限られていたのです。それなのにマネは普通の女性の裸体を描き、しかも彼女はマネと特別な関係にありよく知られた娼婦でしたからスキャンダルになりました。ちなみに2年後のサロンに出品された 「オランピア」 も同じ女性がモデルで、さらなるスキャンダルを巻き起こしたのでした。
カバネル : ヴィーナスの誕生 | マネ : 草上の昼食 |
さて、この落選展を見に行った観衆の中に、モネ と ルノワール と ピサロ(たぶん?)がいました。3人は同じ絵塾で学ぶ友達で、マネの絵に衝撃を受けます。「そっかぁ、絵ってこんなふうに描いてもいいんだぁ!」 彼らはその足で塾を止め、新古典主義に別れを告げました。これが印象派の出発で、それ故にマネが 「印象派の父」 と呼ばれる謂れですが、マネ自身は印象派展に自分の作品を出品することはありませんでした。
モネ : 戸外の人物習作 | モネ : ルーアン大聖堂 |
印象派は光と影の芸術だと言われます。それまでの絵は影を表現するのに黒かこげ茶が使われましたが、印象派の画家達はさまざまの色の濃淡で影を表現しました。モネの 「日傘をさす女」 は女性の顔がはっきり描かれていません。(モデルは怒ったでしょうねぇ…笑) 実はこの絵のポイントは傘の裏側なのです。モネは影を表現する練習にこの絵を描いたので、合計7枚ある 「ルーアン大聖堂」 も同じです。つまり、これを買った人は練習作品に大金を払ったわけですよ。(爆)
モネ : アルジャントゥイユのひなげし | モネ : サン・ラザール駅とモントルグイユ街の祝日 |
ところで印象派に多大な影響を与えたのは何だと思いますか?
日本の 浮世絵 です。ルネサンス(芸術復興)に影響を与えたのはギリシャとローマの芸術ですが、浮世絵はそれに匹敵する影響を印象派に与えているのです。(参考)
オルセー美術館ができて最初の特別展をやった時、そのテーマに選ばれたのが
ジャポニズム であるのも、それを証明しています。
アールヌーボーという名前の美術工芸品を扱う店では、浮世絵がたくさん売られていて、美術様式の
アールヌーボー(新しい芸術)
はこの店の名前に由来します。